大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)1032号 判決

原判示第一の一の123事実理由によると被告人は原審相被告人蔵城三郎兵衛と共謀して判示日時判示群馬県邑楽郡渡瀬村農業協同組合が食糧公団の代行機関として保有し、被告人両名がその判示職務上保管中の判示政府配給米及び同政府配給米代替の砂糖を判示の様に他人に交付したと表示せられているが、右判示のみを以てしては、右米及び砂糖が食糧配給公団の所有物であるか又は右組合の所有物であるかが不明である。而して記録によると右物品が右組合の所有に属していたことが認められるが、果して然りとすれば、被告人等は判示処分行為をなすに当つて、右組合の為にする意思を有していたものの様に原判示第一の一の123の各事実は解釈せられる。何となれば右各判示によると右物品は「右組合の職員二十三名が二泊の予定で塩原温泉へ旅行するについての往復自動車代」、「右組合で会議用又は同組合長野辺沼卯平が晩酌用として購入した清酒」又は「右組合で来客用として仕出しを受けたうなぎ丼」の対価として被告人等が他人に交付したことになつているからである。

従つて、右判示によると被告人等は右組合の為に保管していた右物品を右組合の為に処分したように解せられるところ、果してそうゆう意味の判示事実であるとすればその行為は少くとも横領罪を構成するものではない。尤も右判示と外形を同じくしても被告人等が右の処分行為を、右組合の為でなく、各自己の為に而も右組合の正常の経費以外の経費を支弁するために行つたとすれば、該行為は横領罪を構成することは勿論である。

原判決の理由は右の様な意味の横領罪を構成する所以を説明したものとしては不備の廉の存することは、原判文の解釈上明白である。従つて原判示の第一の一の123の各事実理由は被告人等に業務上横領行為のあることを説示するに足るものと認め得ない。

又原判決挙示の証拠によつても被告人等に前述したような意味で成立することのあるべき横領事実のあつたことを十分には認め得ない。されば原判決における右理由不備は結局においては原審における審理の不尽に基くものといわなければならない。而して右の違法は判決に影響を及ぼすことは明白である。此の点において論旨はいずれも既に理由がある。

原判決は既に此の点において刑訴法第三九七条による破棄を免れない。

(弁護人控訴趣意第一点)

原判決は審理不尽の違法があるから破棄を免れない。

被告人が判決理由第一の一の123の如く政府配給米粳玄米、同精米及配給米代替の砂糖等を夫々渡瀬村農業協同組合職員一同の栃木県塩原温泉へ旅行した往復自動車代として又前記組合の会議用又は同組合長野辺沼卯平の晩酌用乃至前組合の来客用のうなぎ丼の対価として支払つたことを認定しているが右の如き使用方法が横領罪を構成するかどうかは更に右使途が組合の指定経費に該当するかどうかにかかつている蓋横領罪は他人の物の占有者が不正に自己の物として之を領得するの意思を有し其の意思を外形に表示して実行することによつて成立する。

本件において横領罪が成立する為には被告人等が右の物資を前記組合の経費以外の用途に費消することを必要とし、組合のためにする意思を以て之を指定以外の組合経費に流用することがあつてもそれは其支出其当を得ないと云うに止まり不正に領得するの意思を実行したものと云い得ない(大正三年六月二十七日大審院判例判決録二〇輯一三五〇頁)

然して記録を精査するも前記組合の予算の構成が不明にして前記使途に関する組合の経費存在不存在は明らかでなく、従つて前記被告人の使用方法がはたして組合の定めた指定方法による使用であるかどうか不明であつて原判決がこの点をたしかめることなく業務上横領罪の成立を認めているのは著しく不当であつて審理不尽の違法がある。

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